環境からつくるウェルビーイング

AFFECT LAB. 研究所 所長 長谷川晃一インタビュー

AFFECT LAB.について


食事は健康に、ファッションは気分に直結する。では、住宅は?

健康のためにはバランスのとれた食生活が必要だということは、今や常識と言っても過言ではありません。一方、選ぶ服によって気が引き締まったり、楽しい気分になったりといったことも、日常的に誰もが経験していることでしょう。

では、住宅はどうでしょう?「あまり意識したことがない」という方が大半ではないでしょうか。多くの人にとって住宅とは、意識に上ることすらないくらい、当たり前に身近にある存在と言えます。

しかし、住宅は1日の大半を過ごす場所であり、私たちは知らず知らずのうちに住環境からさまざまな影響を受けています。たとえば、大きな道路に面している家では、窓を開けるとうるさいので換気が億劫になりがちです。その状況が続くとカビやダニが発生して健康に悪影響が出ます。一見健康にはそれほど影響がない場合でも、家に帰るのが憂鬱になったり、ストレスが溜まって家族同士の喧嘩が増えたり、毎日の生活にも暗い影を落とすようになります。逆に景色の良い家だと自然と朝カーテンをあけて、窓を開けることが習慣になったり、好きなインテリアに囲まれた家であれば毎日家に帰るのが楽しみになり、家に誰かを招きたくなって整理整頓をすることが楽しくなります。このように、住環境は無意識のうちに私たちの健康や気分に影響を与え、生活のあり方まで変えてしまうのです。

AFFECT Lab.では、私たちが住環境から無意識のうちに受けているさまざまな影響についてご紹介し、住環境を見直すきっかけとなるようなコンテンツや、実際の家づくりのヒントになる情報をご提供していきたいと考えています。

風水や家相は単なる迷信?

私はもともと建築に興味はあったのですがその道には進まず、紆余曲折を経て2007年に占いサービスを提供する会社に入社し、現在も同じ仕事を続けています。そのため、「占いを信じているの?」とよく聞かれますが、私はどちらかというと懐疑的な方で、盲信的に信じているわけではありません。しかし、占いの起源は非常に古く、現代に至るまで長い時代を生き抜いてきた理由はあると思っています。風水や家相はその最たる例で、科学的な根拠があることも多いです。

たとえば風水では、河川湾曲部の外側や道路のカーブの外側に家を作るのは良くないとされています。河川湾曲部の外側は、侵食が進んで家が飲み込まれるおそれや、大雨の際に水が溢れて家が水浸しになるリスクがあることは、科学的な視点からも明らかですよね。道路のカーブの外側も、曲がりきれなかった車が家に突っ込んでくるリスクがカーブの内側よりもずっと高いことは、科学的に検証できます。車のヘッドライトがずっと当たり続けることも、慢性的なストレスにつながります。

では、なぜストレスはいけないのでしょうか?これは科学的に検証されている問いです。生物がストレスを感じると交感神経が刺激され、血圧や血糖値が上げるなど、さまざまな影響が体に現れます。そのため、ストレスを慢性的に受けることで常に血糖値や血圧が高い状態になり、生活習慣病などにつながると考えられています。そのため、脳にとってストレスのない「快」の状態となる家が必要となるのです。

このように、風水や家相には、現代の科学から見ても合点がいくことが多くあります。そうした古来からの知恵と科学的なエビデンスをつなぎ、住宅が私たちに与える影響を網羅的に集めて共有することができないかと考えるようになりました。

適度な刺激も必要

ストレスをなるべく減らすことが重要である一方で、刺激が無ければ無いほどいいというわけではありません。人間には適度な刺激が必要であることを示す「感覚遮断実験」という有名な実験があります。これはその名前の通り、光や音を完全に排除した部屋に被験者を隔離することで、感覚を遮断する実験で、被験者の多くは、幻覚や妄想、抑うつ感を経験したと言います。刺激のない状態が続くと、脳が耐えられなくなるのです。

この実験が示すように、住宅にも適度な刺激が必要です。しかし、現代の建築では適度な刺激が得られていないことも少なくはありません。たとえばタワーマンションなどでは、住宅内に伝わる音域が非常に狭いことが知られています。特に高い音は遮断されてしまっていて、100kHzくらいになるともうほとんど届きません。人間の可聴領域(耳で聞こえる領域)は20Hzから20kHzくらいまでですので、耳では聞こえない音(一般に「超音波」と呼ばれます)があろうとなかろうと関係ないだろうと思われるかもしれません。しかし脳波や発汗量を調べた研究から、超音波がある方が人間はリラックスできるということが示されています。

私たちが生きている時間の大半を過ごす住宅において、この無意識レベルの働きかけは無視できるものではありません。人間が本来の能力を発揮できる適度な刺激を与えるために、家の中の段差や色や形、素材などをどう工夫すべきかについても、AFFECT Lab.では扱っていきたいと考えています。

人間は水のようなもの。容れ物によって形が変わる

このように、私たちは自分で考えて自分の行動を決定していると考えがちですが、実は無意識のうちに周りの環境からの影響を強く受けています。たとえば、ある会社にいたときはまったく活躍できなかったのに、転職するとメキメキ頭角を現す人がいます。これは、短期間でその人の能力が飛躍的に向上したのでしょうか?――多くの場合は、そうではないでしょう。能力を発揮できる環境と、そうでない環境があるのです。

住宅も全く同じで、自分の本来持っている免疫力や能力などが発揮できる家、できない家があります。活発に活動できるかどうかも、家に左右されます。そういう意味では、人間とは水のようなものだと言えます。容器の形が変われば、自然とその形に自分自身の方を合わせてしまうのです。自分が一番多くの時間を過ごす容器、つまり家について、もっと意識してもらいたいというのが、AFFECCT Lab.に込めた私の思いです。

家は本来、有機的な組み合わせ

もちろん、誰にとっても良い住環境というものもありますが、「私はこれが好きだ」という気づきや、地域の特性や一人ひとりの生活スタイルや身体の状況に合った住まいづくりにも、もっと意識を向ける必要があると感じています。たとえば、田舎で活発になる人もいれば、都会で活発になる人もいますよね。良い住まいとは、人によって異なるのです。

もっと単純な例ですと、気温が変われば、良い住宅も変わるはずですよね。しかし残念ながら、現状では断熱などの多少設備は異なるものの、日本中でほとんど同じ家が並んでいます。さすがに北海道の住宅は本州よりも断熱が良いですが、本州では概ね同じ造りとなっています。デザインや間取りという観点からは、北海道から沖縄まで大きな違いはありません。

全国で均質な住宅が作られていることの弊害を示す興味深いデータがあります。一般的に、気温が低くなる冬は、他の季節に比べて死亡率が高くなることが知られています。そのため、冬の死亡率が一番高いのは、一番寒い北海道ではないかと考えるのが自然です。しかし、実際はその逆で、北海道は冬の死亡率が全国で最も低いのです。その背景には、「ヒートショック」が大きく関わっています。ヒートショックは、室温の急激な変化による血圧の大きな変動などを原因とする心筋梗塞などの健康被害のことで、断熱が十分でない住宅で特に入浴時に多く発生します。北海道の住宅は断熱がしっかりしているので、ヒートショックが起こりにくいのです。逆に、暖かい地域では高断熱住宅の普及率が低く季節による室温の変動が激しく、冬の死亡率の上昇が顕著です。

このように、冬の死亡率ひとつとっても、全国で均一な住宅を作り続けることの弊害は明らかです。

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https://www.ibec.or.jp/GBF/doc/sem_05th_16.pdf 左の図の凡例が間違ってるので正しいものを探して掲載

「健康住宅」では不十分。目指すべきはなりたい自分になれる家

ヒートショックやシックハウス症候群など、住宅が健康に悪影響を及ぼしうるという認識は広がりつつあり、病気になりにくい「健康住宅」が今、脚光を浴びています。これは一見画期的ですが、全てのリスクをヘッジできたとしてもネガティブな要因の無い住宅になったに過ぎません。しかし、これまでご紹介した通り、心身に影響を与える要因は想像以上に多いことから、ポジティブな効果を与えてくれる住宅を作ることも、本来は可能なはずです。

たとえば、公共交通機関の駅からの距離で外出頻度が変わります。外出頻度が変わると世の中のチャンスに出会う確率も変わりますし、足腰も弱ってしまいます。新しい人との繋がりができると、近所のお店を開拓したり、一緒にちょっと遠くまで出かけたりと、どんどん活動が広がります。

立地だけでなく、家そのもののつくりも生活を変容させます。キッチンを広くすれば料理しやすくなり、新しいレシピにチャレンジしたくなります。そうすると、ホームパーティがしたくなるかもしれません。しかし逆に、キッチンがすごく狭くて、コンロも一口しかないような家だとどうでしょう?料理そのものが面倒になってしまうのではないでしょうか。

私たちは自分で選び取っているつもりでも、本当は家によって可能性が広がったり、制限されたりしていることが想像以上に多いのです。そのことに意識的に向き合うことで、ネガティブな要因をなくすだけではなく、ポジティブな影響を与える家づくりができるようになると私は信じています。

AFFECT Lab.は「こうなりたい」を叶える家づくりをお手伝いします

住環境からどのような影響を受けているのかを知れば、自分のなりたい姿、送りたい生活から逆算して家を作ることができます。そういう意味で、運気が上がる家は作れるんです。

私の例ですと、家で遊ぶことを楽しみたいと思って、一階は人を呼んで楽しむパブリックな空間に、二階はプライベートな空間にすると決めて、家を設計しました。

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竣工時

今でも一階で頻繁にホームパーティを行っています。そうすると、人のつながりがどんどん広がり、良い出会いがたくさんありました。運気というと胡散臭いですが、あえて言わせてもらうと、そういった出会いで運気も上がったはずです。もしコスト優先で家を造っていたら、そういう出会いはなかったでしょう。

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しかし現状では、自分の体や心に良い影響を与える家をつくりたいと思っても、さまざま情報があちこちに散らばっていて、十分な情報を集めるのは容易ではありません。住環境が私たちに与える影響について、AFFECT Lab.では、一人ひとりの目的にあった住環境を作るために必要な情報をアーカイブすることを目標としています。

また、実際の家づくりの際に、ハウスメーカーと施主の間に入って、ハウスメーカーから提示されたオプションの中から何を選ぶかや、提示されていないオプションの追加交渉など、心身に良い影響を与える家づくりという観点から総合的なコンサルティングを行うことも可能です。住むエリアの探し方、間取りの設計、インテリア選びなど、住宅に関することでしたら幅広くサポートさせていただきますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせいただければと思います。

長谷川晃一

『今すぐためせる、住環境をより良くするコツ』 - Tips for your house -

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